来期の予算案づくりは、費目を並べ、前年の実績と見比べ、増減の理由を言葉にする――と、地味な作業が積み重なります。この記事では、生成AIに下ごしらえを任せて、予算編成のたたき台を短時間で作る手順を、そのまま使えるプロンプト付きで説明します。
結論から言うと、AIに向くのは「費目の洗い出し」と「増減理由の下書き」、そして「複数シナリオの並べ替え」です。金額そのものや、社内規程・実績の数字といった確定はすべて人が行うという線引きさえ守れば、たたき台づくりの時間はかなり短くできます。
<!-- FIGURE: 記事全体を表すアイキャッチ(バラバラの費目カードが「洗い出し→前年比→シナリオ→説明文」の順で1枚の予算表に集約されていく図) -->なぜ予算づくりにAIの下ごしらえが効くのか
予算編成でいちばん時間を食うのは、実は計算ではありません。「去年はどんな費目があったか」を思い出し、「今年は何が増えて何が減るか」を一つずつ言葉にする部分です。表計算ソフトが合計は出してくれても、費目の抜けや、増減の説明までは埋めてくれません。
ここでAIが得意なのは、似た組織の一般的な費目を、いったん幅広く並べることです。人は「ゼロから思い出す」より「並んだ候補から選ぶ・消す」ほうが速く、抜けにも気づけます。ChatGPT や Claude に一般的な費目の型を出させ、そこから自社に合うものだけを残していく――この進め方が、白紙から書き出すより早く、しかも漏れにくくなります。
ただし大前提があります。AIは事実と違う数字をもっともらしく述べるハルシネーションを起こすことがあります。具体的な金額・前年実績・按分の割合などをAIに作らせてはいけません。AIは「項目の洗い出し役」と「文章の下書き役」、金額の確定は「人と実績データ」です。
<!-- FIGURE: AIに任せてよい範囲(費目の洗い出し・増減理由の下書き・シナリオ整理)と、人が必ず持つ範囲(金額の確定・実績の数字・最終判断)を左右に分けた対比図 -->ステップ1:費目を「固定費・変動費・部門別」で洗い出す
まずは、予算に載せる費目を大きく分けて洗い出します。分類の枠を先に決めておくと、AIの出力が散らからず、後で表に落としやすくなります。
- 固定費:人件費、家賃、リース、保険、通信、システム利用料など
- 変動費:仕入れ、外注費、旅費交通費、広告宣伝費、消耗品など
- 部門・プロジェクト別:営業、製造、管理、あるいは案件ごとの費用
次のプロンプトで、一般的な費目をまとめて出させます。
あなたは中小企業の経営管理のアシスタントです。
来期の年間予算を組むにあたり、想定される費目を
下記の3分類でチェックリストとして挙げてください。
【分類】
1. 固定費
2. 変動費
3. 部門・プロジェクト別に発生しやすい費用
【条件】
- 各費目は「勘定科目名+一言の説明」で書く
- 金額は一切書かない(こちらで実績から埋めます)
- 見落としやすい費目には末尾に【抜けやすい】と付ける
- 一般論として挙げ、当社固有のものは「※要調整」と明示する
「【抜けやすい】」を付けさせるのがコツです。更新月だけ発生するソフトのライセンス料、年一回の健康診断、退職給付引当のような忘れがちな費目が浮かび上がります。
ステップ2:前年実績からの増減理由を下書きする
費目がそろったら、前年の実績と並べて「なぜ増えるのか・減るのか」を言葉にします。ここでの数字は自分が実績表から入れ、AIには説明文の下書きだけを頼みます。
次の費目について、前年比の増減理由の説明文を下書きしてください。
・私が渡すのは「費目」と「増減の方向(増/減)」と「背景メモ」だけです
・金額は空欄のまま【 】にしておき、こちらで埋めます
・社内向けの、事実に即した簡潔な文体で
・盛った表現や、根拠のない見込みは書かない
費目:広告宣伝費/方向:増/背景メモ:新製品の告知を下期に予定
費目:通信費/方向:減/背景メモ:回線を1本解約済み
こうして下書きだけAIに任せると、予算説明の文章がそろって読みやすくなります。実際に筆者が手元の想定データで試したところ、費目ごとに増減理由を書く作業は、白紙から書くと1時間近くかかっていたのが、背景メモを渡して整えてもらう形にして20分ほどに収まりました。時間より効いたのは、「通信費、回線を減らしたのに理由を書き忘れていた」といった説明の抜けに気づけたことでした。
ステップ3:保守・標準・積極の3シナリオを並べる
予算は一本だけだと、状況が変わったときに動けません。前提の違う複数シナリオを並べておくと、期中の見直しが楽になります。ここでもAIには枠組みの整理を頼み、数字は自分で置きます。
来期予算を、次の3シナリオで比較する表の枠を作ってください。
・保守(売上が伸び悩む前提)/標準(例年並み)/積極(新規が伸びる前提)
・行は主要な費目、列は3シナリオ
・各セルは金額を書かず「増やす/据え置き/絞る」の方針だけ入れる
・シナリオごとに、どんな指標を見て切り替えるかの目安も添える
方針の言葉だけ先に固め、金額は実績とにらめっこしながら人が入れる――この順番だと、数字に振り回されずに全体像を決められます。
ステップ4:予算説明の資料文をまとめる
最後に、予算案を上長や会議に説明するための文面をまとめます。ここはAIの下書きが最も気楽に使える部分です。
下記のメモをもとに、来期予算案の説明文を作ってください。
・構成は「全体方針→主な増減→リスクと前提→お願いしたい判断」
・金額は【 】の空欄にして、こちらで差し込みます
・断定しすぎず、前提が変われば見直す含みを残す
具体的な金額や、社内の事情に踏み込んだ判断は、自分の言葉で埋めるのが前提です。AIの文面は「型」として使い、要所の数字と結論は人が入れる――これだけで、テンプレ感のない、事実に即した資料になります。
使うときの注意(ここは人が確定する)
- 金額・実績・按分:予算の数字そのもの、前年実績、費用の配分は、AIに作らせず実績データから人が入れます。合計は必ず自分で検算します。
- 機微情報:取引先名、単価、給与など社外秘の数字は、AIに直接入力しません。仮名やダミーに置き換えて相談し、確定作業は社内で許可された環境で行います。
- 最終判断は人:たたき台は抜け漏れを減らす道具であって、経営判断を代わってくれるものではありません。
まとめ
来期の予算案づくりは、①費目を3分類で洗い出す→②増減理由を下書きする→③3シナリオの枠を並べる→④説明文をまとめる、の順でAIに下ごしらえさせると、準備の時間と抜けを同時に減らせます。金額・実績・最終判断は人が持つ、という線引きを守れば、毎年重く感じるこの作業を、落ち着いて進められるようになります。
経営管理や予算・会計の考え方をもう少し体系的に学び直したいときは、UdemyPR に管理会計や経営数字の入門講座があります。気になるテーマから小さく試してみてください。
本記事はアフィリエイトリンクを含みます(PR)。