AIのある日常を、物語で。
AIのある日常を、静かな短い物語で。読み終えて、すこし考える時間を。
物語 の記事
66 件- 物語
あやとり
越していく前の午後、二人は縁側で赤い毛糸をかけ合った。指はもう昔のようには動かない。
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編みかけ
眠れない秋の夜と、まだ終わらないひと目。
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銀杏
答えを出してくれる時代に、道に迷った人が、昔の先生を訪ねる。覚えていたのは、成績ではないものだった。
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鈴虫
秋の夜、二階から細い音が聞こえてくる。言葉が減った息子と、その母の、声にならない数日の話。
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消印
すぐ届く時代に、あえて手紙を選んだ孫娘と、遠くの祖父の秋の話。
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半分こ
同じ道を歩いてきた双子の、はじめて分かれる秋の話。
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整理券
手で走らせる最後の一日。乗る人と、降りる人の話。
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カーテン
二学期のはじまり。教室の前で足の止まった生徒と、何も聞かない保健室の先生。閉じたカーテンの内側で流れる、静かな時間の話。
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花あかり
手で花を束ねる小さな店に、毎週おなじ色を買いに来る青年がいた。
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かかし
年に一度しか会わないいとこと、稲刈り前の田んぼ。じいちゃんの遅い手を挟んで、二人は同じものを立てる。
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巻きひげ
夫の帰りが遅い夜、同居して半年の嫁と義母が二人で留守番をする。ベランダの朝顔の蔓が、支柱ではないほうへ伸びていた。
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おまけ
無人の店がふえた通りに、ひとつだけ灯りのついた駄菓子屋がある。秤の針は、いつも少しだけ行き過ぎて止まる。
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針
夕暮れの商店街。半分だけ開いたシャッターの奥から、少しざらついた音楽が漏れていた。
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重み
妻が半日だけ家を空けた夏の終わり。生後三か月の娘と、父がふたりきりで過ごす。
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せのび
単身赴任の父が、月に一度だけ帰る夜。半年で背の伸びた娘と、見上げていた景色の話。
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渋皮
口をきかない姪と、言葉の下手な叔父。栗をむく秋の夕暮れの、ふたりの手のあいだの話。
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消しゴム
二学期の初日、隣の席に来た転校生は、みんながタブレットを開くなか、ひとりノートと鉛筆を出した。
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白墨
夜の教室に、ひとりだけチョークを使う先生がいた。粉のつく指と、遅れて来た者たちの静かな時間。
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水切り
夏の終わりの一日、姉に子を預かった叔母と、うまくやりたい甥。川原で石を投げる。
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鉋屑
妻が入院した数日、婿は無口な義父の家に泊まった。奥の作業場からは、しゃっ、しゃっ、と鉋の音がしていた。
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毛布
夜を渡るバスで隣り合った、名も知らないふたり。降りる駅は、違う。
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かたむき
夏の終わりの夕立。父の留守に、まだ呼び名の定まらない二人が、一本の傘で帰る。
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一等星
夏の終わり、古いプラネタリウムの遅番。自動音声が消えた暗闇で、彼はひとつだけ、声にする。
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麦茶
盆の入り、久しぶりに帰った実家。冷えた麦茶のポットが、言葉にならないものを映していた。
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待った
四十年、同じ盤を挟んできた老人がふたり。来週から片方が坂の上の家を離れる。残暑の縁側で、最後の一局を指す。
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回遊
夏休みの最後の日、水族館へ来た父と息子。青い水槽の前で、まだ言葉にならないものを二人で見ている。
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柿
目が遠くなっていく父と、実家に帰った娘。庭の木にひとつだけ、まだ青い実がなっている。
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鏡の中
残暑の理髪店。はじめての散髪を怖がる子と、その手を引いてきた父と、変わらぬ手つきの老いた理髪師。三つの顔が、ひとつの鏡に映る。
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日めくり
残業のいらなくなった夜、二人はまだ会社に残っていた。柱にかかった古いカレンダーは、ひと月前の日付で止まっている。
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補助線
残暑の夕方、宿題の図形につまずいた娘と、数学が得意ではなかった父。答えは、すぐそこの画面の中にある。
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夜干し
全部を機械がやってくれる家で、夫が休みの前の夜だけ、洗濯物を手で干す。並んで立つ数分のこと。
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羽音
残暑の屋上、祖父の巣箱と、はじめて蜜をしぼる孫娘。数えることと、聞くこと。
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合言葉
夏の終わり、空き地の基地がなくなる前の夕方。二人の子どもと、二人だけのことば。
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合鍵
向かいに越してきた家族と、縁側で鉢に水をやる老人。留守を頼む一本の鍵から、少しずつ近づいていく夏の話。
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振り子
四十二歳、ピアノ歴一年二か月。小さな発表会の、十二番目の出番。
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足音
十五になった犬は、もう耳も目も遠い。それでも廊下の一歩を、この家で一番よく知っている。
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焦げ目
夏の朝、父はいつも卵焼きを少しだけ焦がす。大会に向かう高校生の弁当箱の底で。
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かき氷
祭りの夜、決めておいた順路をなぞる指と、溶けていく氷。最後の夏を完璧にしたかった。
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蚊遣り
母のいない実家に、久しぶりに集まった姉妹の、ひと晩の話。
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籠
夏の朝の市場。祖母の背を追いかけていた少年が、いつのまにか半歩前を歩いている。
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白線
最後の夏、グラウンドに立つ。三年間、彼が一番うまかったのは、その仕事だった。
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坂道
車が勝手に走る時代に、娘は自分の手で坂道を上ろうとしている。夏の夕方、助手席の父の話。
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皺
夏の朝、母は娘の白いシャツにアイロンをかける。昨夜の言葉が、まだ台所に残っている。
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首振り
空になっていく家で、兄と弟が古い扇風機のスイッチを入れる。夏のひと日の、言葉にならないやりとり。
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栞
古書店に持ち込まれた一箱の本。値をつける端末が見落とすものが、ページのあいだに挟まっていた。
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湯気
町の銭湯が、今月で暖簾を下ろす。番台の澄江が過ごす、いつもと同じ夕方の一場面。
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かぶとむし
夏のはじめ、六歳の息子が一匹のかぶとむしを飼いはじめる。その虫にあとどれくらいの時間が残っているかを、父はもう知っている。
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やぐら
夏祭りの晩。名前を忘れていく母と、踊りを知らない娘。太鼓が鳴りはじめる。
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満ちる
予定日を過ぎた夜明け前。腕の見守りは、まだ静かなままだった。
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燕
夏休み、祖父の畑に泊まりに来た子が、乾いた空を見上げる。スマホは晴れだと言い、祖父は明日は降ると言う。低く飛ぶ燕と、雨のにおいの朝の話。
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助手席
塾の帰り、父と息子を乗せた車が夜の道を走る。ハンドルに手を添えなくてよくなった夜の、手のやり場のない静けさ。
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浮く
市民プールの午後。水を怖がる子と、若い指導員の手のあいだにあるもの。
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出汁
上京して初めての夏。ひとりの台所で、味噌汁の出汁がうまく取れない。
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金魚
毎年ふたりで行った夏祭り。今年は、妹が友だちと行くと言った。
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研ぐ
勤めを終えた最初の平日。持て余した手が、台所の抽斗の奥で古い砥石を見つける。
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余白
書きかけの一枚が、机の引き出しに残っていた。続きを、誰が書くかという話。
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西瓜
夏の夕方、縁側で。ひとつの言葉が出てくるのを、待つ時間の話。
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線香花火
夏の夜、母と幼い息子が縁側でひとつの火を分けあう。落ちるのを、もう少しだけ先に。
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向日葵
娘が家を出た夏、母はひとり、慣れない画面に向かう。庭の隅で、置いていかれた種が背を伸ばしていく。
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常夜灯
深夜のレジに立つ青年と、コーヒー牛乳を買いにくる老人。機械の声が増えていく夏の終わりに、消えない灯りが照らすもの。
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夕立
降らないはずの空から、雨が来た。軒下で肩を並べた二人のあいだに、言えなかったことが少しだけ流れる。
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風鈴
父が長く住んだ家を引き払う夏。片づけを手伝う機械は、たいていのものを正しく仕分けていった。
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秒針
目が遠くなった時計職人と、止まったままの腕時計。音だけが、まだ残っている。
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短冊
母のいない七夕。娘が短冊に書いた、ひとつの願い。
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六月の塩
梅を漬ける家に、はじめて来た嫁。言葉は、半分も通じない。
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ふたつ目の湯のみ
週末に母の家を訪ねるたび、美里は気づく。母が、画面の向こうのだれかと、よく笑うようになったことに。
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