AIのある日常を、物語で。
AIのある日常を、静かな短い物語で。読み終えて、すこし考える時間を。
物語 の記事
21 件- 物語
湯気
町の銭湯が、今月で暖簾を下ろす。番台の澄江が過ごす、いつもと同じ夕方の一場面。
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かぶとむし
夏のはじめ、六歳の息子が一匹のかぶとむしを飼いはじめる。その虫にあとどれくらいの時間が残っているかを、父はもう知っている。
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やぐら
夏祭りの晩。名前を忘れていく母と、踊りを知らない娘。太鼓が鳴りはじめる。
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満ちる
予定日を過ぎた夜明け前。腕の見守りは、まだ静かなままだった。
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燕
夏休み、祖父の畑に泊まりに来た子が、乾いた空を見上げる。スマホは晴れだと言い、祖父は明日は降ると言う。低く飛ぶ燕と、雨のにおいの朝の話。
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助手席
塾の帰り、父と息子を乗せた車が夜の道を走る。ハンドルに手を添えなくてよくなった夜の、手のやり場のない静けさ。
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浮く
市民プールの午後。水を怖がる子と、若い指導員の手のあいだにあるもの。
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出汁
上京して初めての夏。ひとりの台所で、味噌汁の出汁がうまく取れない。
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金魚
毎年ふたりで行った夏祭り。今年は、妹が友だちと行くと言った。
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研ぐ
勤めを終えた最初の平日。持て余した手が、台所の抽斗の奥で古い砥石を見つける。
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余白
書きかけの一枚が、机の引き出しに残っていた。続きを、誰が書くかという話。
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西瓜
夏の夕方、縁側で。ひとつの言葉が出てくるのを、待つ時間の話。
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線香花火
夏の夜、母と幼い息子が縁側でひとつの火を分けあう。落ちるのを、もう少しだけ先に。
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向日葵
娘が家を出た夏、母はひとり、慣れない画面に向かう。庭の隅で、置いていかれた種が背を伸ばしていく。
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常夜灯
深夜のレジに立つ青年と、コーヒー牛乳を買いにくる老人。機械の声が増えていく夏の終わりに、消えない灯りが照らすもの。
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夕立
降らないはずの空から、雨が来た。軒下で肩を並べた二人のあいだに、言えなかったことが少しだけ流れる。
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風鈴
父が長く住んだ家を引き払う夏。片づけを手伝う機械は、たいていのものを正しく仕分けていった。
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秒針
目が遠くなった時計職人と、止まったままの腕時計。音だけが、まだ残っている。
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短冊
母のいない七夕。娘が短冊に書いた、ひとつの願い。
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六月の塩
梅を漬ける家に、はじめて来た嫁。言葉は、半分も通じない。
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ふたつ目の湯のみ
週末に母の家を訪ねるたび、美里は気づく。母が、画面の向こうのだれかと、よく笑うようになったことに。
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