「この作業、結局あの人しか分からない」——そんな属人化を減らすために、まず結論から書きます。社内マニュアルや手順書づくりで、AIは"最初の骨組み"と"抜け漏れチェック"に強いです。頭の中にある手順を箇条書きで渡すだけで、章立て・注意書き・用語の言い換えまで数十秒で整えてくれます。ただし具体的な数値・固有名・社内ルールといった事実は、必ず人が確定する——ここを外さなければ、作成時間も読みやすさも大きく変わります。
<!-- FIGURE: マニュアル作成の役割分担(AI=骨組み・整形 / 人=事実確定・承認)を示すアイキャッチ -->なぜマニュアルは「AIの下書き」と相性がいいのか
手順書が進まない理由は、たいてい「書き出しが面倒」「どの順番で書けばいいか迷う」の2つです。ここは生成AIがいちばん得意な領域です。
- 頭の中の断片的なメモを、読みやすい章立てに並べ替える
- 「前提条件」「準備するもの」「手順」「よくあるつまずき」といった型を自動で用意する
- 社内の人には当たり前すぎて省略しがちな一歩を「ここ、抜けていませんか」と補う
一方で、承認フローの担当者名や、金額・締め日・システムの正式名称などは、AIが推測で埋めると危険です。これはハルシネーション(もっともらしい間違い)につながります。事実は人、整形はAIと割り切るのが安全です。
<!-- FIGURE: AIに任せる範囲と人が確定する範囲の対比表 -->ステップ1:頭の中の手順を「そのまま」渡す
きれいに書こうとしなくて大丈夫です。思いつくままの箇条書きを、Claude や ChatGPT に渡します。整えるのはAIの仕事です。
あなたは社内マニュアルづくりが得意なアシスタントです。
以下は、私が頭の中にある作業手順をメモしたものです。
これを読みやすい手順書に整えてください。
構成は「① 目的 ② 対象者 ③ 事前に準備するもの ④ 手順(番号つき)
⑤ つまずきやすい点と対処 ⑥ 用語のかんたんな説明」でお願いします。
私のメモに書いていない数値・担当者名・システム名は勝手に埋めず、
「【要確認】」と印をつけて空欄にしてください。
私のメモ:
(ここに箇条書きを貼り付け)
ポイントは最後の一文です。分からない部分を勝手に埋めさせず「【要確認】」で残させると、あとで人が事実だけを埋める作業に集中できます。
<!-- FIGURE: 断片メモを渡すと章立て済みの手順書+【要確認】欄が出てくる流れ図 -->ステップ2:新人になったつもりで「抜け」を突かせる
自分で書いた手順は、慣れているぶん一歩飛ばしがちです。そこで視点を変えてもらいます。
この手順書を、その作業を一度もやったことがない新人になったつもりで読み、
「これだけでは分からない」「どこで迷うか」というつまずきポイントを
5つ挙げてください。あわせて、それを解消するために追記すべき一文も
提案してください。指摘は責める口調ではなく、改善案として書いてください。
実際に、月次の経費締め作業の手順書でこれを試したところ、「フォルダのどこに保存するか」「誰にいつ提出するか」という、当人には当たり前すぎて抜けていた2行を的確に指摘されました。ゼロから見直すより、挙がった穴をふさぐほうがずっと速く、読み手にも親切になります。
ステップ3:相手に合わせて言い換える
同じ手順でも、読む人によって最適な書き方は変わります。
この手順書を、次の2バージョンに書き分けてください。
・「はじめて担当する新人向け」:専門用語を減らし、一歩ずつ丁寧に
・「たまにしかやらない人向けの早見版」:要点だけを短い箇条書きで
どちらも、私が【要確認】と書いた箇所はそのまま残してください。
新人向けの丁寧版と、思い出す用の早見版。1つの元ネタから2種類を作れると、マニュアルが「読まれるもの」に近づきます。
運用でつまずかないための3つのコツ
作って終わりにしないために、最初に決めておくと楽なことがあります。
- 社外秘の手順は、会社が許可したツール・プランで扱う。入力を学習に使わない設定(オプトアウト)や法人向けプランを確認する。取引先名など個人情報(PII)は特に慎重に。
- AIが埋めた文章は、公開前に必ず人が一読する。特に数値・締め日・担当は、実際の運用と一致しているか照合する。
- 更新のルールもマニュアルに書いておく。「いつ・誰が見直すか」を1行入れるだけで、放置されて古くなるのを防げます。
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まとめ:型と抜け漏れはAI、事実は人
- AIは章立て・型づくり・抜け漏れチェック・言い換えといった下ごしらえが得意
- 数値・固有名・社内ルールなどの事実は人が確定(「【要確認】」で空欄化させると安全)
- ハルシネーション前提で、公開前に必ず人が一読する
- 「いつ・誰が見直すか」を書いておくと、マニュアルが古びにくい
「あの人しか分からない」を1つずつ言葉にしていく。その最初の面倒な一歩をAIに手伝ってもらい、人は事実の確定と承認に集中する。今日の1つの作業から、手順書にしてみてください。