営業提案書に時間がかかるのは、文章力が足りないからではありません。「白紙から書き始めている」から、毎回ゼロベースで悩んでしまいます。結論から言うと、AIの使いどころは「清書」ではなく「たたき台づくり」と「抜けの点検」です。ヒアリングで得た事実をAIに渡し、構成案と下書きを10分で用意して、あなたは中身の判断と磨き込みに集中する。この分担にすると、提案書づくりはぐっと軽くなります。
この記事では、ChatGPT や Claude を使って、提案書のたたき台を素早く用意する手順を、コピペできるプロンプトつきで紹介します。見栄えのいいスライドを自動生成する話ではなく、「何を、どの順で伝えるか」という中身の骨組みをAIと一緒に作る話です。
<!-- FIGURE: 記事全体を表すアイキャッチ(ヒアリングメモ→AIで構成案→人が判断して清書、の3段の流れ) -->大前提:AIに「事実」を渡し、「判断」は人が持つ
最初に、線引きをはっきりさせておきます。提案書には、大きく2種類の要素があります。
- 事実・条件:顧客の課題、予算感、納期、決裁者、競合状況など。これはあなたがヒアリングで集めるもの。
- 構成・表現:どの順で並べるか、どう言い換えると伝わるか。ここがAIの得意分野。
やってはいけないのは、事実そのものをAIに創作させることです。AIは知らない数字や実績を、それらしく埋めてしまうこと(ハルシネーション)があります。価格・実績・導入社数などの固有の数字は、必ず自社の正式な資料から転記する。AIには「並べ方」と「言い方」を手伝ってもらう、と割り切ってください。
<!-- FIGURE: 「事実・条件(人が用意)」と「構成・表現(AIが下書き)」の役割分担の対比図 -->ステップ1:ヒアリングメモを構造化する
商談後の断片的なメモを、そのままAIに渡して整理してもらいます。きれいな文章にする前の、箇条書きのメモで構いません。
以下は顧客との商談メモです。提案書を作る前提として、
「顧客の課題」「実現したい状態」「制約(予算・納期・体制)」「決裁のポイント」
の4つに整理してください。メモに書かれていない項目は、
勝手に埋めず「未確認」と明記してください。
# 商談メモ
・情シス3名、問い合わせ対応に追われている
・社内からの質問が月300件くらい?(要確認)
・予算はまだ聞けていない
・導入は下期を検討したいと部長が言っていた
・過去に別ツールを入れたが定着せず離脱した経験あり
...
ここでのコツは、「メモにないことは埋めるな」と明示することです。これを書いておかないと、AIは空欄を推測で補ってしまいます。「未確認」と返ってきた項目が、次の商談で聞くべき宿題リストにもなります。
実際にやってみて効いたこと
私がこの整理を Claude に頼んだとき、いちばん助かったのは提案の中身より「未確認」の洗い出しでした。自分では分かったつもりでいた案件で、「決裁のポイントが未確認」と淡々と返ってきて、ヒアリング不足に気づけたことが何度かあります。提案書の質は、書き出す前にどれだけ事実がそろっているかで、ほぼ決まります。
ステップ2:構成案(骨組み)を作る
事実が整理できたら、提案書の構成案を出してもらいます。いきなり本文ではなく、見出しレベルの骨組みから作るのが失敗しにくい順番です。
整理した内容をもとに、提案書の構成案(見出しと各セクションの狙い)を作ってください。
条件:
- 相手の課題→原因→解決策→導入の進め方→費用感の目安、の流れを基本に
- 各見出しに「そこで伝えたい一言」を添える
- 決裁者が短時間で読む前提で、A4で5〜7ページに収まる分量に
- まだ数字が確定していない箇所は「(社内で確認)」と明記
構成案が出たら、順番を入れ替えたり、不要な章を削ったりを対話で詰めます。「導入事例の章を、解決策の直後に移して」「費用の話は最後でなく中盤に」——このやりとりが、AIを使う最大の利点です。ゼロから並べ替えるより、すでにある骨組みを直すほうが、はるかに速く判断できます。
<!-- FIGURE: 提案書の基本構成(課題→原因→解決策→進め方→費用感)の流れ図 -->ステップ3:刺さる言い換えと、本文の下書き
骨組みが固まったら、各セクションの下書きを作ります。ここで役立つのが、同じ内容を相手の言葉に翻訳する使い方です。
以下の説明文を、3パターンに言い換えてください。
- A:現場担当者向け(手間がどれだけ減るかを具体的に)
- B:管理職向け(工数とリスクの観点で)
- C:決裁者向け(投資対効果と、やらない場合の停滞を淡々と)
過度な誇張や「絶対」「必ず」といった断定は使わないでください。
# 元の説明
問い合わせ対応をAIで一次対応することで、対応時間が短くなります。
売り込みの表現は、つい大げさになりがちです。「必ず」「劇的に」といった断定は、決裁者にはむしろ警戒されます。AIに「断定を避けて」と条件をつけると、落ち着いたトーンの候補が出てきます。そこから、自社が根拠を持って言える範囲に手で削っていくと、信頼される文章になります。
なお、下書きはあくまで素材です。数字や固有名詞は、この段階で必ず正式資料と突き合わせて差し替えてください。提案書やプレゼン資料の作り込み全般は、プレゼン資料をAIで作るでも扱っているので、スライド化まで進めたい方はあわせてどうぞ。
ステップ4:想定質問と「弱いところ」を先に潰す
提案書ができたら、相手の立場でツッコミを入れてもらうのが最後の仕上げです。ここを省くと、商談本番で言葉に詰まります。
あなたは、この提案を受ける側の決裁者です。
以下の提案書に対して、承認をためらう理由・厳しい質問を10個挙げてください。
そのうえで、それぞれに対して事実ベースでどう答えるべきか、方向性だけ示してください。
# 提案書
(本文を貼る)
「他社と比べてなぜここなのか」「導入後、社内に定着しなかったらどうするのか」——痛いところを先にAIに突かせておくと、当日あわてません。前に一度ツールが定着せず離脱した経験のある顧客なら、その不安に先回りして答える章を足す、といった判断もできます。
使うときの注意点
便利な一方で、気をつけたい点が2つあります。
- 顧客の機密情報を安易に入力しない:会社名や個人名、未公開の金額などをクラウド型AIに渡す前に、勤務先のAI利用ルールを必ず確認してください。判断に迷うときは、固有名を伏せ字(A社・担当者B)にして相談するだけでも、構成づくりには十分役立ちます。社内で安全に使うための考え方は会社で生成AIを安全に使うガイドにまとめています。
- 最後は人が読み切る:AIの下書きには、事実の取り違えや、自社の実態に合わない表現が混じります。提案書は会社の看板を背負う書類です。送る前に、必ず自分の目で通してください。
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まとめ
- 提案書づくりでAIが担うのは「たたき台」と「抜けの点検」。清書と判断は人が持つ
- 事実・数字は自分で用意し、AIには並べ方・言い換えを任せる(固有の数字を創作させない)
- ヒアリングメモは「未確認」を明示させて構造化すると、宿題も見える
- 骨組み→下書き→言い換え→想定質問で先回りの順で進めると速い
- 顧客の機密は社内ルールを確認し、迷えば固有名を伏せて相談する
白紙とにらめっこする時間を、事実を集める時間と、相手を想像する時間に振り替える。AIを「たたき台製造機」と割り切ると、提案書は怖い作業ではなくなります。