「この集計、VLOOKUPだっけ、それともXLOOKUP?」と検索バーを開いたまま手が止まる。そんな時間、地味に積み重なっていませんか。Excelやスプレッドシートの関数は種類が多く、引数の順番も覚えにくいものです。久しぶりに使う関数だと、毎回ネットで調べ直すことになりがちです。
この記事では、その「関数を思い出す・組み立てる」作業をまるごとAIに任せるやり方を紹介します。ChatGPTやスプレッドシートの上で、日本語で頼むだけで数式が返ってきます。検索系・集計系・文字列の整形・エラー直しまで、そのままコピペで使えるプロンプト(AIへの指示文)も用意しました。
先に一番大事なコツを1つだけお伝えします。それは、「数式だけください」と頼まないことです。AIには「どのソフトの、どのバージョンで」「データがどんな形で並んでいて」「最終的に何を出したいか」をセットで渡します。これだけで、返ってくる数式の精度がぐっと上がります。理由はこの後すぐ説明します。
なぜ関数こそAIに任せると効くのか
関数は、覚えるより「正しく組み立てる」ほうが大変です。VLOOKUPの引数が4つ、SUMIFSは条件が増えるほど長くなる。こうした「型は決まっているけれど手で書くと面倒」な作業は、AIが得意とするところです。
しかも関数には正解の形がある程度決まっています。AIは過去の膨大な例から、近い形をすぐ出してくれます。つまり、あなたが関数名を暗記していなくても、やりたいことを日本語で言えば形になるわけです。会議の文字起こしを要約するようなAIで議事録を時短する工夫と同じで、「考える部分」だけ人間が持ち、「組み立てる部分」をAIに渡す発想です。
AIに数式を作らせる「依頼の型」
精度を上げる鍵は、4つの情報をそろえて渡すことです。前提(ソフトとバージョン)→ データの形 → やりたいこと → 出力形式。この順に書くと、AIが迷いません。まずはこのテンプレートを土台にしてください。
万能テンプレート
あなたはExcelとGoogleスプレッドシートに詳しいアシスタントです。次の条件で関数(数式)を作ってください。
【ソフトとバージョン】Excel 365 / Excel 2019 / Googleスプレッドシート など
【表示言語・地域】日本語版。引数の区切りはカンマ「,」かセミコロン「;」のどちらか
【データの形】
- シート名: Sheet1
- A列=日付, B列=商品名, C列=金額 …のように1列ずつ説明
- データは2行目から最終行まで(例: 500行)
【やりたいこと】例: D列に、同じ商品名ごとの合計金額を出したい
【条件・例外】空白セルは0扱い / 該当なしは「該当なし」と表示 / 小数は四捨五入
【出力形式】
1. そのまま貼れる数式(1行)
2. その数式が何をしているかの短い説明
3. 私のバージョンで使えない関数を使った場合は代替案も
まだ不明な点があれば、数式を書く前に質問してください。
最後の一文がポイントです。情報が足りないとき、AIにいきなり書かせず「先に質問して」と促すと、的外れな数式が減ります。
VLOOKUPとXLOOKUPの使い分け
検索系でよく迷うのがこの2つです。違いを正しく押さえておくと、AIの出した数式の妥当性も判断できます。
| 項目 | VLOOKUP | XLOOKUP |
|---|---|---|
| 使えるバージョン | ほぼ全バージョン | Microsoft 365 / Excel 2021 / 2024(2019以前は不可) |
| 既定の一致 | 近似一致が既定(注意が必要) | 完全一致が既定 |
| 左方向の検索 | できない | できる |
| 列の挿入 | 列番号がずれて壊れやすい | 壊れにくい |
| エラー時の表示 | 別途IFERRORが必要 | if_not_found引数で指定可 |
ここで大事なのは、XLOOKUPは新しいExcelでしか使えない点です。AIは便利なXLOOKUPを勧めがちですが、お使いが2019以前だと「#NAME?」というエラーで動きません。だから依頼のときにバージョンを必ず伝えます。次のプロンプトは、AIに環境を見て選ばせる形です。
環境に合わせて選んでもらう
次の表から値を引っ張る数式が欲しいです。VLOOKUPとXLOOKUPのどちらが向いているか、私の環境に合わせて選んでください。
【環境】Excel 365 / Excel 2016 など(XLOOKUPが使えるか不明なら指摘してください)
【元データ】シート「マスタ」のA列=社員ID, B列=氏名, C列=部署
【知りたいこと】別シートのA2にある社員IDをキーに、氏名と部署を取り出したい
【条件】キーが見つからないときは「未登録」と表示したい
出力は次の形で:
1. おすすめの数式(1行)
2. なぜそちらを選んだか(バージョン制約や、列を後から挿入したときに壊れるか等)
3. 旧バージョンでも動く代替の数式
ピボットの代わりの集計をAIに頼む
「店舗ごと・カテゴリごとの合計」のような集計は、ピボットテーブルを使わず数式だけでも作れます。条件付き集計のSUMIFS・COUNTIFS・AVERAGEIFSが定番です。さらにMicrosoft 365なら、GROUPBYやPIVOTBYといった新しい関数で、ピボットに近い要約表を一発で出せます。
ただしGROUPBYやPIVOTBYも新しいExcel専用です。ここでもバージョン申告が効いてきます。
集計表を数式で作る
ピボットテーブルを使わず、数式だけで集計表を作りたいです。
【環境】Excel 365(GROUPBY/PIVOTBYが使えるか教えて)/ それ以前 / Googleスプレッドシート
【元データ】シート「売上」: A列=日付, B列=店舗, C列=商品カテゴリ, D列=金額、2行目以降
【作りたい集計】店舗ごと×商品カテゴリごとの合計金額の表
【条件】今月分だけ / 金額が0の行は除く 等
出力は:
1. 私の環境で最適な方法(SUMIFS か GROUPBY/PIVOTBY か)と、その数式
2. データが増えても自動で範囲が伸びる書き方(可能なら)
3. 動的配列が使えない場合の代替案
Googleスプレッドシートの正規表現で文字列を整える
住所から都道府県だけ抜く、電話番号のハイフンを消す、といった文字列の整形は、Googleスプレッドシートの正規表現関数(REGEXEXTRACT・REGEXREPLACE・REGEXMATCH)が便利です。
ここで知っておきたい制約があります。スプレッドシートの正規表現は「RE2」という仕組みを使っていて、先読み・後読み・後方参照は使えません。ネットで見つけた正規表現がそのまま動かないことがあるのは、このためです。依頼時にこの前提をAIに伝えると、無理な書き方を避けてくれます。なお、これはスプレッドシート側の話で、Excelの正規表現関数とは挙動が違う点に注意してください。
文字列を抜き出す・置き換える
Googleスプレッドシートの正規表現関数で、文字列を整えたいです。
【対象セル】A2(例の中身: ここに実際のサンプルを2〜3個貼る)
【やりたいこと】例: 「東京都新宿区西新宿1-2-3」から都道府県だけ取り出したい
【欲しい結果の例】入力→出力の対応を具体的に
注意: GoogleスプレッドシートはRE2エンジンなので、先読み・後読み・後方参照は使えません。それを前提にした数式を出してください。
出力は:
1. 使う関数(REGEXEXTRACT / REGEXREPLACE / REGEXMATCH のどれか)と数式(1行)
2. 正規表現パターンの各パーツが何をしているかの簡単な説明
3. サンプル以外のパターンが来たときに崩れないかの注意点
エラーの原因をAIに直してもらう
数式が「#N/A」や「#REF!」を返すと、慣れていないと手が止まります。AIはエラーの原因究明も得意です。主なエラーの意味を先に押さえておくと、AIの説明も読み解きやすくなります。
| エラー | だいたいの意味 |
|---|---|
| #N/A | 検索値が見つからない(VLOOKUP/XLOOKUP/MATCH等) |
| #REF! | 参照先のセルが削除されるなどして参照が無効 |
| #VALUE! | データ型が想定と違う(数値が欲しいのに文字列等) |
| #DIV/0! | ゼロや空白セルで割り算している |
| #NAME? | 関数名のスペル間違いや、未定義の名前 |
ここで1つ注意があります。IFERRORでエラーを包むと表示は消えますが、それは「直した」のではなく「隠した」だけです。原因を確かめないまま隠すと、本当はデータがおかしいのに気づけません。次のプロンプトは、隠す前に原因を突き止める形にしています。
エラーの原因究明と修正
次のExcel数式がエラーになります。原因と直し方を教えてください。
【出ているエラー】#N/A / #REF! / #VALUE! / #DIV/0! / #NAME?
【今の数式】ここに数式をそのまま貼る
【データの形】関係するセル・列の中身を具体的に(例: A列は日付だが一部が文字列、検索キーに前後の空白がある等)
【やりたかったこと】本来こうしたい
出力は:
1. このエラーが起きている具体的な原因(私のデータに即して)
2. 修正した数式(1行)
3. 同じエラーを今後防ぐコツ
※IFERRORで隠すだけでなく、根本原因が分かる説明を優先してください。
バージョンと言語設定で起きるズレ
つまずきやすいのが、環境差による「動かない」です。2つ覚えておくと混乱が減ります。
ひとつは、日本語版でも関数名は英語のままだという点(VLOOKUPはVLOOKUPです)。もうひとつは、引数の区切り文字が地域設定で変わる点です。日本やアメリカではカンマ「,」ですが、ヨーロッパの多くではセミコロン「;」になります。AIが英語圏前提のカンマで返すと、設定によってはエラーになります。動かないときは「区切りをセミコロンにして」と頼み直せば直ることが多いです。
関数で限界が来たらマクロへ
「カテゴリごとにシートを分けて転記」「毎朝決まった範囲をPDF出力」のような繰り返し処理は、1つの数式では書けません。そこで登場するのがマクロです。ExcelならVBA、GoogleスプレッドシートならGoogle Apps Script(GAS)を使います。
注意したいのは、この2つは別の言語だということです。VBAはExcel専用、GASはスプレッドシート専用で、コードを流用できません。AIに頼むときは、どちらのソフトかを必ず明記してください。ここから先、マクロやGASに踏み込みたくなったら、AIと一緒にプログラミングを学ぶ進め方も次の一歩として役立ちます。
数式だけでは難しいので、自動化のコードを書いてほしいです。
【プラットフォーム】Excel(VBAマクロ)/ Googleスプレッドシート(Google Apps Script)※どちらか必ず明記
【今のデータの形】シート名・列の意味・行数
【やりたい処理】例: B列のカテゴリごとにシートを分けて転記
【実行のきっかけ】ボタンを押したら / メニューから / 毎日決まった時刻に
出力は:
1. 貼り付け先の手順(Excelなら Alt+F11、スプレッドシートなら 拡張機能→Apps Script)
2. コード全文(コメント付き)
3. 元データが壊れないよう、まずコピーで試す注意書き
Microsoft 365 Copilot(Excel)の今
2026年は、Excelの中で直接AIに頼める仕組みも広がってきました。Word・Excel・PowerPointのエージェント機能(Agent Mode)は2026年4月22日に一般提供が始まり、Excelではデータの探索から数式・テーブルの変更までをまとめて指示できます。セルの中でAIを呼ぶ「COPILOT関数」もあります。
ただし注意点も多めです。Copilot in Excelは、OneDriveやSharePointに保存し自動保存をオンにしたファイルでないと使えません。料金も別途かかります(後述)。COPILOT関数については、公式に「不正確な答えを返すことがある」と明記されており、金額や確定値の計算には向きません。どのソフトで足りるか迷う場合は、無料と有料のAIの違いも参考にしてください。多くの数式作成は、無料のChatGPTやClaudeでも十分こなせます。
使うときの注意点
便利な反面、AIの数式は「下書き」だと考えるのが安全です。以下は必ず確認してください。
- 必ず自分の実データで検算する。 AIは存在しない関数名や、別ソフト用の構文を自信満々に書くことがあります。出てきた数式は、一部のデータで手計算や目視と照らし合わせてから本採用してください。同じ目的でも書き方は複数あり、データの形で最適解は変わります。
- バージョンを伝える。 XLOOKUP・FILTER・GROUPBY・PIVOTBYなどはMicrosoft 365向けの新しい関数で、2019以前では動きません。使っているバージョンを必ず申告し、出てきた関数が自分の環境で使えるか確かめてください。
- ExcelとGoogleスプレッドシートは別物。 ARRAYFORMULAやREGEXEXTRACTはスプレッドシート専用、VBAはExcel専用です。どちらのソフトかを明記しないと、使えないコードが返ります。
- 区切り文字・小数点は地域依存。 カンマで動かないときはセミコロンを試してください。
- エラーは隠す前に原因を確かめる。 IFERRORで包むと、データ不整合に気づけず、間違った集計を正しいと思い込む危険があります。
- マクロは元ファイルのコピーで試す。 VBAやGASは削除・上書きを含むと元に戻せないことがあります。いきなり本番データに当てないでください。
- COPILOT関数の出力を計算結果として使わない。 公式に不正確な可能性が明記されています。数値・金額・確定値の用途には向きません。
- 機密データの取り扱いを確認する。 社外秘や個人情報を含む表を外部AIに貼る前に、勤務先の利用ポリシーと、データが学習に使われない設定かを確認してください。
料金にも触れておきます。Microsoft 365 CopilotのCopilot Businessは、2026年6月時点で年払い1ユーザーあたり月$18(2025年12月〜2026年6月の期間限定割引で、通常は$21)とされています。ただしこれは別途Microsoft 365のベースプランが前提で、割引期間・プラン構成は変わりやすい価格です。本文の金額をそのまま信じず、最新はMicrosoft公式の価格ページで確認してください。提供状況(プレビューか一般提供か、対象ライセンス)も更新が早いので、一次情報での確認をおすすめします。腰を据えて関数やデータ分析を体系的に学びたい人は、Udemyの買い切り講座PRがセール時に手頃で、関数からピボット、マクロまで段階的に追えます。手元に1冊置いておきたいならExcel関数の参考書PRも、AIの出力を検算するときの拠り所になります。
まとめ
- 関数はAIに「組み立て」を任せると速い。覚える負担が減ります。
- コツは「数式だけ」ではなく前提・データの形・やりたいこと・出力形式をセットで渡すこと。
- XLOOKUPやGROUPBYなど新しい関数は古いExcelで動かないので、バージョンを必ず伝えます。
- ExcelとスプレッドシートはVBAとGASで言語が別。どちらか明記しないと使えないコードが返ります。
- AIの数式は下書き。実データで検算し、エラーは隠す前に原因を確かめます。
- 金額・提供条件・規約は変わりやすいので、必ず公式の一次情報で確認しましょう。
完璧な数式を覚える必要はもうありません。やりたいことを言葉にできれば、あとは少しの検算で形になります。今日の集計作業から、さっそく頼ってみてください。